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ウェザーリポート戦略 (モメンタム戦略的なアプローチでポートフォリオを考える)

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最終更新:2018年5月12日

モメンタム戦略

twitterで話題になっていた投資戦略に興味が湧いたのが本記事のきっかけになりました。モメンタム戦略というもので、「ウォール街のモメンタムウォーカー」で取り上げられている戦略です。リターンが良い割に損失が少ない戦略として注目していました。海外のWebサイトでも取り上げられています。

ウォール街のモメンタムウォーカー 〔個別銘柄編〕 (ウィザードブックシリーズ)

ウォール街のモメンタムウォーカー 〔個別銘柄編〕 (ウィザードブックシリーズ)

  • 作者: ウェスリー・R・グレイ,ジョン(ジャック)・R・ボーゲル
  • 出版社/メーカー: パンローリング
  • 発売日: 2017/10/15
  • メディア: 単行本
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ウォール街のモメンタムウォーカー

ウォール街のモメンタムウォーカー

要するに、上がっているアセットクラスを買って、下がっているものは保有しないことで上昇を捉えて下落を避ける戦略です。モメンタム戦略を取り上げたザイボックスさんのツイートからはかなり良いパフォーマンスが期待されます

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オールウェザーポートフォリオに応用してみよう

下がるのを予見して売れればディフェンシブに運用ができます。レイ・ダリオのオールウェザーポートフォリオに応用して、さらに下落を防ぐことが出来るかどうかを検証してみます。今回もRを使用します。データはQuandlとquantmodで読み込みます。Quandlは様々な金融指標を取り出すことができるパッケージです。API keyが必要なのでこちらのサイト(https://www.quandl.com )で登録(無料でできます)してみてください。
→Rが使える方はシミュレーションするためのコードをまとめた記事を参照してみてください。
drkernel.hatenablog.com


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読み込むデータはS&P500, 米国長期債(VUSTXで代用)、米国総合債券(VBMFX)、金(WGCからデータを取得)、コモディティ(FREDからデータを取得)、米国短期債(VSGBXで代用)です。長期債の長期データが無く、データの取得は1987年3月31日〜2018年3月31日にしました。コモディティのデータも2018年3月分までしか無く、月々の価格のデータなので、一度月々のリターンを計算して、それを元にリターンを求めます。

データを取得したらリターンを計算します。他のバックテストのサイトを見るとだいたい指標に一致していますが、S&PはETFを再投資するよりはなぜかリターンが劣ります。オールウェザーポートフォリオを再現すると1987年に投資して2018年まで年1回リバランスすると800%〜900%くらいのリターンが得られました。リーマンショックでのドローダウンがやや本来よりも大きいのが気になりますが、トータルのリターンは大体同じなので良しとします。

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モメンタム戦略を試す

 得たデータを使って幾つかの戦略を立ててシミュレートしてみます。

戦略1 : モメンタム原理主義戦略

・年始に1回ポートフォリオの見直しを行います。
・過去12ヶ月の成績が良かったアセットクラスに100%の資産を投入します。
・投資先のアセットクラスはS&P500, 長期債、総合債券、金、コモディティ、短期債です。
・検証した期間は87年3月〜2018年3月、前年度のデータを利用しているのでモメンタム戦略は95年1月に投資を開始しています。(以降も同じです。)

単純な戦略ですが、レバレッジ無しで試した中では最高のリターンで、約2000%のリターンを叩き出しています。ただ、ドローダウンはそれなりにあり、最大で20%程度の下落を経験しました。いきなり長期債100%のポートフォリオになったりするので、実際にやるには勇気が必要な戦略です。

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戦略2: ウェザーリポート戦略(WR戦略)

今回検証したかったものです。オールウェザーポートフォリオをベースにします。
オールウェザーポートフォリオに似せたポートフォリオで、米国株30%、米国長期債(VBLTX) 40%、米国総合債券 15%(VBMFX)、金 7.5%、コモディティ 7.5%のウェイトのポートフォリオを前提とします。
・年始に1回リバランス
・直近12ヶ月の成績が短期債(VSGBX)より良ければその割合でホールド、悪ければ全て短期債に移す
・次のリバランスの際に、直近12ヶ月の成績が短期債より良い資産はオールウェザーポートフォリオのウェイトで買い戻す

かなり地味な結果がでました。リターンはオールウェザーポートフォリオよりも低かったです。元々リスクが少ないポートフォリオではリスクを抑える効果はそこまで出ないのでリターンもそこまで増えないようです。株式を買う時期が来たとしても高々30%ですからね。ただ、ドローダウンが全然無くほぼ右肩上がりなのはとても安全です。相場の嵐が来る前に外出を控えるこの戦略を「ウェザーリポート戦略(WR戦略)」と名付けます(なんじゃそりゃ笑)。

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戦略3: レバレッジドウェザーリポート戦略(LWR戦略)

リターンが悪いけれどリスクが低いのであればレバレッジをかけることでリターンを増やすことが出来るかもしれません。オールウェザーポートフォリオレバレッジをかけた戦略はROKOHOUSEさんで以前紹介されていました。
http://www.rokohouse.net/archives/2482
このポートフォリオ(SPXL 20%, TMF 25%, IEF 25%, GLD 15%, GSG 15%)を元にします。SPXL, TMFは計算で架空のリターンを計算しています。

・年1回年初にリバランス
・リバランスでは直近12ヶ月のリターンが短期債よりも良いクラス(SPXLのリターンではなくS&P500のリターンをみています)はホールド、短期債よりも悪ければ短期債に切り替える

レバレッジをかけた戦略では予想通りリターンは2500%程度とかなり良くなりました。一方でドローダウンは最大で14%程度と驚異的な安定感を見せています。

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感想・制約

 今回の調査の制約として幾つか気になる点があります。
一つ目は、リターンについて。あまり本質的ではありませんが、バックテストでSPYなどのETFを運用したほうがS&P500指数自体のリターンよりだいぶ良いです。配当のせい?なのかは分かりませんが、リターンの値については今回の結果はそこまで正確ではありません。同様に、長期債のリターンの源泉は金利だと思うのですが、実際の運用ではTMFはそこまでの金利は得られず、リターンが押し下げられる可能性があります。

制約はありますが、モメンタム戦略はただでさえリスクが低いオールウェザーポートフォリオのリスクを下げることが出来る可能性が示唆されました。これくらい安定しているとレバレッジをかけつつ、撤退する時期を見て撤退するタイミングを計れるよい戦略である可能性があります。

今後の課題としては、モメンタム戦略で売買・リバランスをする間隔を狭める工夫をしたい、ということと、本質的にリターンを産まない資産である金やコモディティの役割が必要なのかの検討、REIT新興国株など他のアセットクラスへの拡張。アセットクラス内での金融商品を競わせつつ組み入れるETFの種類を増やすことでしょうか。今回検討した戦略を全部まとめたチャートを最後に御覧ください。どんな戦略をとるかはあなた次第です。今回の記事が参考になれば幸いです。

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・さらに突っ込んでさまざまな戦略を考えて見ました。レバレッジをかけた戦略もこちらで幾つか検討しています。
drkernel.hatenablog.com

・リスクを抑える戦略についてもう少し簡単に理解したい方に
drkernel.hatenablog.com

スプレッドシート管理ツールの紹介記事
drkernel.hatenablog.com